五胡十六国、南北朝と短命の政権が乱立した長い分裂期を経て、6世紀末に久しぶりに中国を統一した隋。しかしその命脈もわずか三十余年で尽き、次なる唐の時代に入ってようやく世に安定と繁栄がもたらされる。「隋唐演義」はそんな激動の時代を舞台に、隋に反旗をひるがえした有名無名の英雄たちの物語。忠とは何か。義とは何か。男として人間として、それぞれの信念とプライドを賭けた人間ドラマは見る者の胸を熱くせずにはおかない。
製作費は2.8憶元。当時のレートで約30億円を超える。そんな大作の監督を任されたのは、香港映画で長年の実績を持ち近年は中国でも活躍するビリー・チョン。撮影には6台の映画用カメラを使い、初めて映画の手法で撮ったドラマとして話題を呼んだ。また、武術指導のグオ・ジェンヨンも「レッド・クリフ」などに参加し豊富な経験を持つアクションのベテラン。劇中アクションの数々はまさに映画にも負けない迫力だ。
主人公の秦瓊には、「水滸伝」の燕青役が記憶に新しい中国きっての二枚目スター、イェン・クァン。若きヒーロー羅成を演じるのは、中国版「花より男子」こと「一起来看流星雨」でブレイクした人気アイドル、チャン・ハン。いずれもルックスはもちろん演技力、本格的アクションでもうならせる。そのワキを固めるのは「項羽と劉邦 King's War」や「水滸伝」のフー・ドン、「さよならバンクーバー」のジャン・ウー、映画「アイスマン」のワン・バオチャンをはじめ、フー・ダーロン、ドゥ・チュン、イン・シャオテンら並み居る実力派スターたち。傾国の美女・蕭美娘を好演したバイ・ビンのファム・ファタールぶりも見逃がせない。
ゲームやマンガにもなっている「三国志」や「水滸伝」に比べると、日本で「隋唐演義」の知名度はまだそれほど高くないかもしれない。とはいえ隋の煬帝や唐の太宗(李世民)の名を知る人は多いだろう。ほかにも本作には中国の有名なキャラクターが何人も登場。中でも秦瓊と尉遅恭はのちに神格化され、中華圏の家屋の入り口などに貼る一対の絵(門神)のモデルになった。また、自由人すぎる程咬金と異形の怪童・李元覇もそのぶっとんだユニークさで高い人気を誇っている。